尿石症により尿道閉塞に至った、メスのウサギさんの紹介です。
プロフィール
品種:ミックス(体重 2.4kg)
性別:未避妊メス
年齢:5歳齢
☛尿道閉塞は、男の子のイメージだと思いますが、稀に女の子にも発生します。
主訴
前日から強く力んでいて、排便および排尿が少ないとのこと。来院時には、食欲および活動性も低下している状態でした。
☛ ウサギは排便のトラブルによって力むことは、あまりありません(ひどい下痢の時はありえる)。
☛ 強い力みは、排尿トラブルを強く疑い、緊急性が高い状態です。
☛このウサギさんは、院内でも頻繁に力む様子が見られました。
検査
すぐにレントゲン検査を実施し、尿道内に大きな結石を発見しました。
サイズを計測すると結石は1.3cmでした。これは、尿道径に対してかなり大きいサイズで、
明らかにこの結石が尿道を閉塞していると考えられました。
☛ウサギの尿道径は数ミリほどです。
☛メスは比較的大きい結石も排泄する事ができると言われています。
血液検査において、腎数値は上昇し(腎機能が低下している状態)、電解質(体のミネラルの数値)にも
異常を呈していました。血液検査から、かなり切迫した状況であることが分かります。
☛腎数値の上昇は長時間、尿が出ていなかった可能性を示唆します。
☛ウサギは、強い痛みやストレスが原因で急死することがあります。
治療
夜間の時間帯でしたが、緊急手術となりました。
当初、結石の位置から膀胱切開によるアプローチを試みましたが、結石を摘出する事はできず..。
陰部切開および外尿道口切開によるアプローチに急遽変更しました。
この方法によって、なんとか結石まで到達し、あとは引き出すだけのはずでした。
が、、、結石は尿道に強く癒着し、引き出せない状態でした (~ ~;)。
結石をゆっくり尿道から剥がし、尿道の損傷を最小限するように意識しましたが、かなり出血…。
縫合を終えた時には、3時間以上が経過していました。
幸いにも術中の麻酔は、比較的安定していました。ですが、
覚醒遅延、腎障害、低血圧の進行、呼吸障害etc...様々な合併症が頭をよりぎます。。。
その後は、ICUで集中管理を行いました(頑張ってくれと祈ります)。
☛麻酔時間が延長するほど、合併症の発生率が高くなり、死亡率も上がります。
術後
術後から十分な量の排尿を確認し、翌日には動けるまで回復してくれました。
数日入院の末に無事退院。
☛ ウサギは入院ストレスで排便停止や拒食する事があるため、その際は早めに退院します
☛ 術部の瘢痕化や炎症で尿道が再閉塞する可能性があり、ヒヤヒヤです
術後17日目
排尿のトラブルもなく、傷もキレイに治癒しました。
再発リスクのため数ヶ月毎に定期検査は必要ですが、治療は終了としました。
尿石症の予防
✅ 尿が砂っぽいウサギさんは、十分に水分を摂りましょう
✅ 健康診断で早期に発見しましょう
✅ カルシウム含量の高い食事(アルファルファ、一部のペレットフード)に気をつけましょう