異物の誤飲

犬種:ミニチュアダックス
年齢:5歳6ヵ月
性別:未去勢

手術の画像が含まれます。
苦手な方は閲覧をご遠慮ください

【概要】
 頻回嘔吐を主訴にご来院いただきました。若いワンちゃんであることと嘔吐の回数が多かったため異物の誤飲を疑い画像検査を実施させていただきました。超音波検査にて空腸領域に異物による腸管閉塞が確認され、緊急手術を実施した患者様です。

【画像所見】

レントゲン検査では軽度な胃の拡張以外明らかな異常は認められませんでした。

超音波検査にて空腸領域に閉塞物を確認しました。
症状と画像所見から異物の誤飲に伴う機械的イレウス(物理的な腸閉塞)と診断いたしました。

血液検査において大きな異常は認められなかったため、同日開腹下にて異物の摘出に臨みました。

【手術画像】

空腸領域に閉塞物を見つけ、直上をメスで切開し異物の摘出を実施いたしました。

摘出された異物は毛糸やフェルトなどで構成されているようなもので、やや硬く、腸管を完全に閉塞させる大きなものでした。
術後3-5日に程度縫合した腸の裂開のリスクがあるため注意が必要です。


幸い今回の患者様の術後経過は良好で先日抜糸のためご来院いただきました。
変わらず元気な姿を見せれくれ安心いたしました。

異物の誤飲は命に関わる緊急疾患です。
普段から「ガジガジ」、「くちゃくちゃ」といろいろな物を口に運びがちな若いワンちゃん、ネコちゃんに多い疾患です。
ワンちゃん・ネコちゃんと一緒に生活をされている方であれば、一度はご自分のペットが口に何かを加えているのを目にしたことをがあるかと思います。

日常的に何かをガジガジしている子と一緒に生活をされているご家族様ですと、「これくらいなら大丈夫」、「いつも飲み込むまではいかないから平気かな」と安易に考えてしまい、誤飲による腸閉塞を招いてしまいます。
今回のワンちゃんのご家族様は誤飲に関しては留意されており、行き届いた管理をされておりましたが、それでも誤飲は防ぐことが難しい難儀な疾患となります。

おもちゃの一部、プレイマットの接続部分などがよく経験する誤飲物になります。
特に危険なものはひも状の物です。「ひも状異物」と呼称がついているほど危険なもので、一般的な異物であると、
腸の一部をコルク栓のように蓋をしてしまうにとどまりますが、「ひも状異物」は巾着のように腸全体を引きつってしまい、腸の壊死を招き短時間で命に関わります。特にネコちゃんに多いもので私のネコちゃんでもヒヤリとした経験があります。

それ以外では鋭利なもの、化学薬品を含むもの(電池など)、磁石(磁石が消化管を挟み込むようにくっついてしまい壊死を引き起こします)も代表的な危険なものになります。

みなさんも異物に誤飲に関しては注意していただき、ご自身のペットさんが誤飲の危険がある場合には誤飲するようなものを撤去することはもちろんですが、今回のご家族様のように迅速な対応を是非お勧めします。
典型的な症状は頻回の嘔吐、食欲不振、場合によっては下痢のみしか呈さない患者様もいらっしゃいますので注意が必要です。