尿道閉塞

症例
日本猫、5歳(推定)、去勢雄
主訴:ぐったりしている、陰部を気にする、トイレに何度も行く

夜間診療の時間帯にお電話にて、ご相談がありました。
お話の内容から、一番に尿道閉塞が疑われたため、早急な受診をおすすめしました。
→「尿が出ていない」「元気がない」「吐いている」「トイレに何度も行く」
 など、これらの徴候を確認したら、まず疑うべきは尿道閉塞です。

来院後、猫ちゃんの状態を確認。意識はしっかりしている事が確認し、まずは身体検査です。
身体検査にて、膀胱を触知すると下腹部に硬結した膀胱が触知されました。この場合、尿道閉塞はほぼ確定です。
また、聴診で心拍数正常および不整脈なしを確認しました。
→尿道閉塞が進行した患者さんは、非常に危険な状態であり一刻の猶予もありません。
 来院時の本人の様子や、身体検査でその緊急性を評価します。
 また、緊急性の高い患者さんでは心音に異常が見られることもあります。
→今回は、意識ははっきりしており、比較的初期の尿道閉塞でした。

膀胱に超音波検査を当てることで、拡張した膀胱および尿道が確認されました。血液検査と閉塞解除の準備です。
興奮状態の猫ちゃんに鎮静処置を実施し、採血および尿閉解除を実施しました。
→興奮状態の患者さんでは、尿道強く閉まってしまうため閉塞解錠が難しくなることが多いです。
 また、閉塞解除には痛みを伴う可能性もありますので、本人の負担軽減のためにも鎮静処置(ブトルファノールなど
 を使用)を行う事があります。
→血液検査にて、腎臓の数値(BUN,Cre)および電解質(Na,K,Cl)を確認します。これらの数値に異常があれば、
入院管理も検討しなくてはいけません。
→閉塞解除の方法は、病院によって様々です。今回は、留置針の外套,アトムピンクカテーテルなどを陰茎に挿入し、キシロカインゼリーや滅菌生理食塩水で尿道内のフラッシュを複数回行い、結石を膀胱内に押し戻すことができました。カテーテルから勢いよく排尿がみられ、まず一安心です。

尿検査の結果、ストラバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)が検出されました。
顕微鏡では明らかな細菌感染は見られません。
また、超音波検査においても膀胱内に砂上の堆積物が確認されています。
→猫ちゃんで非常に多い結石症です。体質や飲水量の低下により生じ、細菌性膀胱炎を伴う事もあります。
 治療のメインは食事療法です。
→自宅でもしっかりと飲水させることが重要です。

治療として、皮下点滴を実施し、今回はお家で様子をみて頂くことになりました。
→閉塞後利尿といって、閉塞解除後にはおしっこが多量にでることがあり、脱水に注意が必要です。そのため、点滴を実施します。
→陰茎を気にして舐め続けるタイプの患者さんでは、陰茎の炎症・腫脹によって再閉塞する可能性があります。
→膀胱内の結石が消えるまでは常に再閉塞のリスクがあります。
→尿道閉塞を繰り返すと、通常の手順での閉塞解除が難しくなっていきます。最終的な治療として「会陰尿道瘻形成術」という外科による的な処置が必要になります。これは、陰茎を切除し、会陰部分に新しく尿道を形成する処置です。

冬場には、尿道閉塞の来院件数が増加します。
・おかしいと思ったら絶対様子見しない
・日頃からしっかり飲水させる
・食事療法
これらがとても重要です。

⬇︎ストラバイト結石