猫の糖尿病

症例:11歳11ヵ月
動物種:猫
症状:歩き方がおかしい

歩き方の異常(足がすべる。踵をつけて歩くようになった)を主訴に来院された猫ちゃんです。
ご家族様への問診により飲水量の増加と身体検査から体重低下を確認しました。
検査内容として血液検査、尿検査、腹部超音波検査をご提案させていただき、検査の結果高血糖と重度な尿糖を確認しました。
その他明らかな異常を認めなかったため糖尿病と診断しました。

インスリン製剤の投与をご自宅で実施していただくことで歩き方の異常は改善し飲水量も一般的な猫ちゃんの量にもどりました。

糖尿病は人でも発生する聞きなじみのある疾患だと思いますが、犬猫でも頻繁に遭遇する疾患です。
猫の糖尿病はヒトで発症するⅡ型糖尿病と病型が近しいと言われ、主に膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるインスリンの枯渇に伴い様々な症状が発生します。血糖値の上昇に関わるホルモンは成長ホルモンやコルチゾール、グルカゴン、アドレナリンなどたくさんのホルモンが存在してますが、血糖値の低下に関わるホルモンはインスリンのみであるため、このインスリンの存在が血糖値をコントロールする上で非常に大切役割を果たしています。

典型的な症状は飲水量の増加、排尿量の増加、体重低下であり一緒に生活していると変化に気づかず発見が遅れることもしばしばあります。
さらに今回の猫ちゃんのように踵をつけて歩くハックウォーキングと呼ばれる特徴的な歩様を呈し病院に来院されるケースも存在します。
これはヒトでも報告されている糖尿病性末梢神経障害であり、持続的な高血糖により神経細胞にダメージがおよび、普段つかない踵をつけて歩くようになってしまします。早期の対応ができればこれら神経障害は改善しますが、長らく放置しているともとのように歩くことが難しくなるケースも存在します。またヒトと異なる点として猫の場合は糖尿病に伴う腎臓へのトラブルや白内障などの合併症は少ないことが知られています。

発症年齢は中齢(7~8歳)以降に多く、一部の報告では性差が報告されており去勢雄に発症が多いとされています。
ご自宅の少しぽっちゃりした中齢の去勢済みの雄猫ちゃんがよく水を飲む、排尿量が多くなった、あるいはここ最近急に痩せたなど糖尿病を疑う症状を認めた場合最寄りの病院で検査を受けることをお勧めいたします。放置することで糖尿病性ケトアシドーシスと呼ばれる重篤な合併症を引き起こし命に関わるケースも存在しますので様子見は禁物です。

猫ちゃんの糖尿病の場合、適切な治療により糖尿病から離脱できる患者さんも存在します。治療にはインスリン製剤の注射のみではなく、適切な体重コントロールと食事の管理が挙げら、いずれの治療も優劣つけ難く非常に大切なものとなります。

当院では猫ちゃんの糖尿の治療を実施するためのインスリン製剤各種、適切な体重コントロールを目指すための知識とフード各種を揃えておりますのでお悩みの方はご相談ください。